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矛 盾 

《 矛 盾 》

桜の開花宣言とともに、本格的な春の訪れを感じていた。1年ぶりに、お水の会員さんに山菜セットをお届けできるのでは…と目論んだ、今回のお水取りだった。暖かい陽射しに恵まれ山肌の雪もだいぶ消えていた。森のバスの周辺では、白く残る一角を探す方が困難なほどだった。カーラジオから、北陸から北日本にかけての日本海沿岸に、マイナス36℃の寒気団が流れ込み大雪になる恐れなどという情報が流れてきてもピンとくる訳もない。夜になってもさほどの寒さではなく、布団に潜りこむと早々にストーブを消せるほどだった。
だが、翌朝になると頭まで被った布団から出られないほどの厳しい寒さが、森のバスを包みこんでいた。うっすらと明るくなり始めた窓の外を確認すると、あるはずのないつららが垂れ下がっている。通りを走るクルマの音が、心なしか静かなようだ。意を決して起き上がり、水の里の村の様子を見てみると、昨日までとは嘘のような白1色に染まっていた。『なんで?』正直な感想だ。しかし、吹雪が2日目となると『嘘だろ?』にかわり、ついには3日目まで続くと『いいかげんにしてよ!?』と捨てゼリフを吐いていた。

まったく今年の雪はどれだけ降れば気が済むのか?雪かきをしている僕の横に乗りつけた移動販売車のオヤジさんが、『ひどいもんだな!!』と苦笑しながら話しかけてきた。買物にやってきた村人も『大変だな!?』と1人黙々と雪かきをしている僕に労いの声をかけてくれた。そんな僕らを横目に、春休みになった村の子どもが雪かきようの通称“ブル”を引きずりながらやってきた。その姿に、一瞬、脳溢血で倒れた前のおじいちゃんの家の雪かきにやってきたのかと思ったが、そんな予想はまんまと裏切られ、おじいちゃんの家の前は素通りし、どんどんとこちらに近づいてくる。そこまで来て、“ブル”に灯油用のポリタンクが積まれているのが確認できた。
『水かい?』と声をかけると、ちょっとはにかんだ笑みをもらしながら、『水槽の水を汲みにきたんです』とはっきりとした口調でその子はこたえた。そして『家の水はクスリを入れたばかりだから、金魚が死んじゃうんだ!!』と続けた。村の各家庭にひかれている水道も、もとは僕らが飲んでいるのと同じ沢からひいているのだが、4、5年前に行った水道工事の際に中間地点に貯水槽を設け、そこで消毒用のクスリを定期的に入れているのだそうだ。
それまでも、同じ所から水をひいていてなんともなかったのに、国家予算を利用した水道工事となると、問題がないとわかりつつも、他にならいクスリを入れなければならないのである。その水では金魚が死んでしまうため、わざわざクスリを入れていない水を汲みにくる矛盾。こんなことが、まだ幼い子供の心にどのように映っているのかと思うと、無性に悲しくなってきた。その水では、小さな命は奪われてしまう。ヒトには害がないというが、いま目の前に起きている様々な現象をみて、本当に害がないなどとどうやったら言えるのか?
その子は、水槽の金魚を通して、大人の矛盾を見ぬいている。でも生活の一環としてこうした矛盾が感じられるのは、まだ救いがある。その矛盾さえも気付けず、平々凡々と過ごしている街の子供達はどうすればよいのだろう。大それたことなどできやしない。ただ、子供を持つ親の役目として、“本物”を子供達に与えてあげ、“本物”と“まがいもの”の違いを子供と一緒に感じていくしかない。そのために、何が“本物”なのかを僕らは学び続けていかなければ…。この世にはびこる“まがいもの”に騙されないように。頭で考えるのではなく、身体が自然と反応できるように…。学ぶことは、あまりにも多すぎる。思いもかけない雪のおかげで、村の子供からとっても大切なことを教えてもらった。ありがとう。

- 高 志 -

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