FC2ブログ

スポンサーサイト 

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

おくりびと 

 トラさんが息を引き取ってから、はや1ヵ月あまり。ベストセラー本になぞらえて、なんだか心が整わないな、などと言いながら月日だけは淡々と過ぎていく。送る側がこうなのだから、きっとトラさんも何がなんだか訳がわからず、それでも妙に身体が軽くなって、あっちこっち行きたいところを飛び回っているのだろう。そんなトラさんをあの世へ送り出そうと、2/11(土)にたくさんの方々が集ってくださった。
 生前、トラさんは人の死、いきものの死というのは悲しむものではないというスタンスをとっていた。現世での暮らしを終え、新たな世界へと旅立つのだから、明るく送り出してあげるのが本当の姿だというのが持論だった。
 近年、そうした考え方は異端ではなくなり、中にはこの世からの『卒業』という言葉を用いて、温かく送り出そうという方々も増えてきているようだ。
ならば、トラさんを送り出すのもしみったれたものでは本意ではないのだから、明るく楽しく送り出そうと心に決めていた。それになにより、懐かしい方々に久しぶりに会えるというのも楽しみのひとつであった。
九州や関西、または会津といった遠方から駆けつけてくれた方々や、仕事を抜け出して来てくれた方々、ラ・ラビアータでお馴染みのツエ村から寄稿してくださっている『ジョー』さんこと上田隆さん・真奈美さんご夫妻など、普段なかなかお会いできない方々との再会は、トラさんが置き土産とばかりにプレゼントしてくれた宝物だ。
それに、残念ながらご参会いただけなかった方からは、素敵な詩を贈っていただいた。送る会が始まる前に、この詩を目にしたとき、『もう今日はこの詩と巡り会えたことで満足だ』と心から思った。それほど、心に響く詩であった。

続きを読む

スポンサーサイト

それでも前へ・・・ 

『どのくらい溜まっているんだ?』
帳簿を覗き込みながら、村おさ・長さんが声を一段落とし、山のお母さんに問いかけた。
『半年くらいかな?』
5ヶ月という数字を理解しながらも、返答は少々ぼかした言い方となった。
『うーん、どうしたもんかな?』
村おさ・長さんは腕組みをしながら、しばし黙考した。『とにかく、呼んで話を聞くべ!』
村おさ・長さんと山のお母さんは、水の里で東北釣堀苑という釣堀&食事処を営んでいるが、それと同時に郡山の自宅周辺、すなわち日本大学郡山校舎のまわりでアパート経営もしている。星コーポという名称だが、首都圏なら立派なマンションとして通るほどのもので、第1から第3までの3棟を経営している。日本大学の目の前ということもあって、学生さんの入居が大半を占めるが、社会人も多数入居しているようだ。
その内の一室で、家賃の滞納が起きているのだ。学生が大半ということもあって、1、2ヶ月の滞納は良くあることらしいが、半年近くの滞納で音沙汰もないとなると、やはり問題にしないわけにはいかない。日をあらため、入居者に連絡をとり、状況を確認することとなった。
入居者は、案の定、日本大学の大学院生であった。青ざめたその顔には、大粒の涙が頬を伝っていた。『申し訳ありません。実は、大学を辞めるしかないと思っているんです』彼は岩手県の出身で、実家は大震災の際に津波に襲われ、家ごとすべて流されてしまったそうだ。どうにか一命だけは取り止めたそうだが、あとは全てを失ってしまい、現在は仮設住宅で寒さを凌いでいるということだった。そのような状況ゆえに、仕送りもままならず、家賃が払えなくなってしまったのが原因であった。
大学院生活もあと1年を残しているが、そのような状況だけにこの春で大学院を退学することにしたということだった。

続きを読む

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。