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新年を迎えるために 

その年の最後のお水採りの際には、新年を迎えるために必ずすることがある。水場に鎮座する大岩にしめ縄を張ることと、水源地へのご挨拶だ。
 持って行った水のタンクすべてに水を汲み終えると、まだ夕方だというのに村の気温表示板は-1℃をしめしていた。その晩は、オリオン座が水源地の山の上に横たわり、他の星々とともに冬の輝きをはなっていた。
 だが、翌朝はすべての景色を白一色に覆ってしまうほどの積雪となって、困った。しめ縄は、岩に積もった雪をはらえばどうにかなるが、雪の山道を水源地までのぼるのはひと苦労である。徐々に明るくなってきたものの、どうするか踏ん切りがつかずに布団のなかで思案にくれていたのだが、ふと思い立って窓の外を覗いてみると、向かいの山の斜面が真っ赤に染まっているのが目に飛び込んできた。雪で白く染まった斜面に、朝焼けで一点だけが真っ赤に染まる幻想的な光景に、背中を押されたようだった。
 『よしっ、行こう!!』

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冬が来る前に 

駆け足で過ぎ去っていった水の里の秋。夜、村内に設置してある気温表示計が、遂に0℃を点滅させていた。ラジオから流れる天気予報では、翌朝濃い霧に包まれるとの知らせ。夜中に目を覚ませて星空を見つめると、東の空からオリオンがゆっくりと起き上がってきた。冷えた空気のせいか、普段よりもきらめく星々に見とれていても、肌を突き刺すような冷気でなくなってきたから、予報通り朝には霧が出るだろうと確信し、ふたたび布団を頭から被ってもうひと眠り。
朝、心細そうに鳴く鳥の声に目を覚ますと、通りをはさんだところにある村おさ・長さんのお店である東北釣堀苑が霞んで見えないほどの霧に包まれていた。霧の中、一筋の光が向かいの背見山から水の里を突き抜けると、水墨画のような幻想的な光景を一瞬だけ作り出し、次第に霧を晴らして、いつもの水の里を浮かび上がらせていた。
昨夜のオリオンと言い、朝の幻想的な光景と言い、自然が作り出す芸術に心が弾んでいたところに、さらに今回のお水採りの間、一度も味わうことがなかったお日様の暖かさに包まれたのだから、否が応にも身体が動き出すというものだ。それでも、村の気温表示計は10℃を点滅させるだけだった。暖かい。骨の髄まで感じるような暖かさに、汲み終えた水のタンクをクルマに積み込む作業をしていると、じわりと汗が滲み出してきて、T-シャツ1枚になったほどだ。

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